回心誌

世の中わがんね

「日本はどこに向かっているのか」 ビデオニュース・ドットコム

宮台:僕らの世代よりも上の世代は逃げ切り世代とかって彼ら(宮台の教え子)に呼ばれていて、自民党に入れることで、まあ先は持たないかもしれないけど、なんとか自分が退職するくらいのところまではね、つまり自分が退職金もらって隠遁する、隠居するくらいのところまではね、なんとか持たせるっていう観点から自民党に入れるしかない。これはね、ほめられた態度ではないけど合理的だよね。問題は、やっぱ若い人なんですよ。若い人たちがね、今でも就職動向を見ていると、いわゆる巨大企業に入ろうとしている。親が喜ぶ会社に入ろうとしている。で、まあ投票率の低さ、本当に40代、30代、20代って低くなるんだけれども、このままの体制がどのみち続かず、続かないにもかかわらず逃げ切り勢力によって確実にサポートされているという事態に気がついていない。あるいはそもそも危機意識が無いのでそういうことに関心を寄せようとしないっていうね、ある種の若い世代の自業自得って言うところが僕はすごくあると思いますよ。リベラル勢力が受け皿になろうにも若い世代がこのままの社会には先が無いっていうふうな想いが無いんだもん。もうほとんど沈みかけてるかもしれない舟、しかしまあちょっとアベノミクスでね、またぴゅっと浮いたんですよ。でもまあ、たぶん沈むでしょう。ジョージ・ソロスが言ったようにね。

逃げ切り世代は沈む前に死ぬでしょう。沈むことによって死ぬんじゃなくて沈む前に死ぬでしょう。で、若い世代は舟乗り換えないと、生きのびられませんよ。だったら……っていうふうに考える若い人たちがいないと、受け皿も出て来れないよね

日本ではリベラルの受け皿が無いのか? なぜ無いのか? という議論。55年体制は役割を終えたが、保守とリベラルによるバランスの良い健全な民主主義が形成される兆しがない。それは若者に危機意識が無いからだ、と。事実、若者の方が投票率が低いのは世界的な傾向だが、日本はイギリスに次いで特にそれが顕著だ*1

 

 

神保:若者の保守化ってのはどう説明がつくんですか。

もう年金、社会保障自体はこのままではもう絶対に持たないわけですよね。数字は人によって若干予想違いますけど2030年くらいにはいずれにしてももうダメだと。となるとそれ以降に社会保障のお世話にならなきゃいけない人たちにとってはとにかく抜本改革は早ければ早い方が本当はいいわけじゃないですか。だけどむしろ保守。今の状態を維持しようと言うふうに若い人たちがどんどんなってくるというのは、これはどう説明がつくんですか。

宮台:維持しよういう意欲があればいいんですけれども、そうじゃなくて、ある種の自明性から逃れられていないということがすごく大きいという風に僕には思えますね。想像力が及んでいないということが一つの大きな要因としてあります。公共的な関心があるかどうかっていうのは社会がどうなっているのか、社会を生きている人間たちがどういう状況にあるのかをちゃんと見ようとしているかどうかっていうところにあるっていうところでいうと、それがすごく、無いんですよ。

例えば、故郷から、故郷が田舎にあって東京に出てくる人間たち。本当にあまり関心が無いんですよ。自分の生まれ故郷がどうなるのかっていうことが気にならないのかって。「いや〜もうあんまり気になりません」みたいな人ばっかりなんですよ。だから、二・二六の人たちが聞いたら、えって怒ると思う。「お前自分たちの生まれ故郷がもう立ち行かなくなるかもしれないということに対して義憤を覚えないのか!」みたいなことはね、言ったら完全にKYですよ。「意味分からない、何言ってるの、この先生」っていうね、そういう感じ。

あと介護の現場、生活保護の現場、色んな現場がもう回ってないんですね。それは自分の人間的ネットワークがあれば聞き知ることが出来るんだけど、全く知らないんですよ。この社会がまだ回ってると思ってる人がたくさんいるわけ。回ってないんですよ、色んなところがね。そういう意味で、社会の全体がまず見えていないので、想像力を及ぼすことができず、なので危機意識も乏しく、今ではない別のあり方を目指さなければならないと思いようがないという感じですね。

 

まず社会についてリアリティを持つことが大事だと。個人的にはドキュメンタリー映画は良いきっかけになると思う。ただし、ドキュメンタリーには言うまでもなく欺瞞がある*2。そのことも意識した上で、映画ではこう書かれていたけれど、実際にはどうなんだろう、そうだ、図書館で調べてみよう、行って確かめてみよう、となれば……。

 

萱野:若者の中に、いわゆるパイが縮小してるっていう意識はそれなりにあると思うんですよ。それが縮小するパイをどうやったら持続できるかっていう方向に議論がいかずに、なんとかそこにしがみつきたいって話になっちゃうんですよね。要するに自分はとにかくこぼれ落ちたくないんだと。だから本来はパイが縮小してるのは別にそれこそ中国や韓国からとられているわけではないんだけど、中国韓国をバッシングする方向にも向かうと。自分がこぼれおちるかもしれない。だからしがみつきたい。それが防衛的になって他者への攻撃につながる。

だから、しがみつきたいって思いは強いんですね。しがみつきたいって思いを裏返せば、それだけ社会で利益に預かれる利益に分配できるパイそのものは小さくなってるという意識は、朧げながらあると思うんですね。その危機意識はあるんだけど、でもじゃあどうしたらいいかは全く分からない

そもそもじゃあ学生にどうして投票行かないのって聞くんですけど、ときどき「私が言っても何も変わらないから」って強弁する人もいるんですけど、それはただの強弁ですよ。むしろ、よくわからないって人の方が本音に近い。もちろん景気が良くならなければパイは増えないんですけど、そもそもパイを分配する方法を決めること自体が国会でやってるんですよと、言うことがまず分かってないんですよね。一番国会で大事なのは、色んな社会の決まりを決めることでももちろんあるんですけども、その決まりの中で一番大事なのはこのパイをどうやって分配するんですか、どう使うんですか、というのが一番大事ですよ。ここに声を繁栄させなければ、当然自分たちのところにはパイはきませんよ。そういう力学が全く分かってないんですよね。だから、政治ってなんですか?国会って何ですか?なんで選挙いかなきゃいけないんですかっていったら、それは限られたパイをいかに自分のとこに持ってくるかのためにみんな投票行くんだよって言うことを私は教えてますけども。

それをまず気がつかない限りは結局、彼らはよく分かんないからって言って、パイは縮小してるけどそれでどうしたらいいんだって話にならずに、とにかくしがみつきたいんだ。しがみつくためには変な寄生虫みたいなパラサイトは排除したいし、だから排外主義になるし、自分さえ良ければいいっていう個人主義になるんだ。そういう発想で保守化してるんだと思うんですね。

最後の太字部分がまさに実感のあることで印象深い。