回心誌

日々是回心

売買春について

 日本における売買春の捉えられ方は非常に微妙だと言える。

 売春防止法では、「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」とされているが、刑罰があるのは管理売春すなわち売春の斡旋等であり、個人売春は違法ではあるが刑罰はない。

 しかし、実際的に管理売春が行われている地区もある。ソープランドは日本中にあるが、これを管理売春でないとみなすのは直観的にはかなり無理がある。

 国家が売春に対してとる立場は概ね3タイプに分かれる。

  1. 国家の管理のもと管理売春を認める
  2. 管理売春は認めないが個人売春を認める
  3. 売春を一切認めない

 日本は条文の文言のみを見れば個人売春を含めて売春を一切認めていないように見えるが、刑罰の有無で見れば法的には個人売春のみを認めており、運用としては事実上管理売春を認めていることになる。

 宮台真司はかつてブルセラ論壇で援助交際について議論したとき、日本の男たちは自分の妻が売春を行うのは許せないが、その一方で買春を行ってきたことを指摘した。そのような嘘社会をまずなんとかしなければ教育すらできない、という趣旨だった。

 今の日本の売春に対する立場は、二枚舌、三枚舌だ。構造としては売春を温存しつつも、アリバイとして純血主義を装っている。

 売春をやめろと言ったところでどうにかなるわけではない。ヒステリックな締め出しは地下化を招く。
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 なぜヨーロッパで売春を合法化する方向に来たのか、これは基本的には教育の問題なんですよ。
 売春は絶対に「いかんのだ」というと、「いかんことはやるなよ」で話は終わってしまうんですね。
 そうではなくて、あなたたちは、例えば18になれば、売春は現実に選べる選択肢としてあります。いつでも売れます。男の人はいつでも買える状態になります。そのときにあなたは、売春をやりますか、売りますか。
 そういう、現実の個人の選択として自分の身に引き受けた問題として論じたり感じてもらうように教育するためには、実は選べる選択肢として社会の中に売春をする、あるいは買うという振る舞いがあるんだということにしないと、売春はいけないこととして教育の中から吹っ飛んでしまうんですよ。

 厳罰主義のようなものがあるとすると、ちょっとした気まぐれで売春をしてしまうようなことが今の子たちにたくさんあるんですよ。厳罰主義や威嚇主義のようなものであるとすると、あたしはもうダメだみたいになっちゃうんですね。社会学の言葉でスティグマって言いますけどね。

 なぜソープランドで事実上売春と同じ振る舞いがあって、警察官から自衛官から教員から皆買いまくっているのに罰せられないかというと、既知の間になったあとで自由恋愛が生じているからという虚構を創りあげて罰しないことにしているんですね。これは笑い話ではないですか。
 そういうふうな隠ぺいをやるからこの社会は嘘社会だと、皆で立て前で綺麗なことを言いながら要するに好きなことをやればいいやと。

 売春禁止法にある男思想の背景には、男は誰でも買ってもいいが、女はプロだけが売れ、という男のエゴがあるんですよ。逆に言えば自分の妻と娘だけは売らないで欲しいというエゴなんですね。

 日本では低年齢の性をタブーとする伝統はない、ということを押える必要があります。売春をタブーとする伝統も日本のムラ社会にはありません。

 女の子たちっていうのは社会の実態について知らないわけ。大人たちの社会ではどれだけ売買春が横行しているかっていうことに関する情報が全くないところで突然中学校や高校になってテレクラや告白投稿誌を通じて「なんだ、男社会はこんな風になっとるんか」っていう風に突如気が付くんですね。
 じゃあ、綺麗なことを言っていた親や教員はなんだよと。

 どんなきれいごとを言ったって抜け駆けしたほうが勝ちじゃないかっていう感じ方をしてしまうのは全く致し方ないし正当な感じ方だと思うんですね。つまり男社会のエゴイズムと男の女に対する期待のアンバランスが残っている以上、男はみんなきれいなことを言って自分の家族だけを守りたいだけじゃないか、という勘繰りをされてしまう。

 フランスを除きますと、日本の夫婦の婚外性交渉つまり不倫の体験割合というのは先進国の中でも非常に高いんです。

 民俗学の成果でもありますように、子どもはなぜ日本の伝統の中で村の子だと考えられているのかというと、最終的には子どもは誰の子かよく分からないという事情もあったというさる民俗学者の説もあるんですね。

 さる民俗学者とは、赤松啓介だろうか。『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』という著書がある。

 町山智弘は宮崎駿の映画『千と千尋の神隠し』について売春についての映画であることを指摘し、日本の性観念は従来大らかなものだったという宮崎の見解を紹介している。

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