西川美和監督の映画『ゆれる』の感想
ネタバレ含
序盤は三角関係だが、女性が死んでから法廷劇に転換する。
吊り橋が揺れるように、記憶も証言も揺れる。
「自白偏重主義が〜」という社会派映画(『それでも僕はやっていない』みたいな)には見えないが、しかしやっぱり考えてしまう。私自身も自分の記憶には自身がない。逆にこういう衝撃的な事件の現場に居合わせたら、記憶に焼きつくんだろうか? 人の記憶の不確かさや自白に頼る危険性を指摘する研究もある。
あの兄弟は、あのあとどうなったんだろう。
兄の笑顔はハッピーエンドを示唆しているけど、でも現実問題として平和な関係に戻れるはずがないように思ってしまう。
本当のところは誰にも分からんのだろうけど、しかし映画の演出から見るに、オダギリジョーは自分が兄を追い込む嘘の証言をしてしまったことに気づいたんだろう。しかし、気づくのが遅すぎた。名誉回復のための再審請求というのも狭き門ではあるが手段としてはある。しかし、一度嘘をついた弟を兄は心の底からは信用できない気がする。
自分が弟の立場に置かれたら、つまり記憶違いのために誰かを不利な状況に追い込んでしまうとしたら、実に恐ろしい。
検察官のキム兄が本当に嫌な奴で、素晴らしい演技。
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