これで、慰安婦について見当違いな議論は減るかもしれない。良いサイトができた。
- Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任
http://fightforjustice.info
これまでも、個人のページで、資料を交えながら慰安婦問題について本質的な議論を展開するものはあったが、いかんせんデザインが野暮ったく、相当の関心のある人でないと途中で引き返してしまうだろうな、というものばかりだった。このサイトはデザインもまとまっており求める情報へ容易にアクセスできる。また、資料も豊富で説得力もありそうだ。
まず Q&A の「何が問題か「慰安婦」制度と公娼制」に目を通した。
強制連行の有無は問題の本質ではなく、女性を奴隷的に管理したことが問題なのである、ということがよくわかる。
ただ、いくつか気になる点がある。
6 朝鮮戦争とベトナム戦争でもあったのか?
侵略者だったことの認識も反省もない橋下氏は、侵略者の例を出してきて、ごまかそうとしているにすぎません。
橋下は (当初はごまかそうとしていたのかもしれないが、)日本も悪かったと言っている。日本と同様アメリカも侵略者で悪かったとするなら、この項目の執筆者と橋下の立場は同じではないか? 他の議論について詳細に証拠を取り揃えているのにだから、橋下について「ごまかそうとしているにすぎない」とする根拠を示すべきでは? 橋下を敢えて悪者扱いするメリットはあるのか? 私はこのサイトは10年、20年後も慰安婦議論に役立ち続けるだろう思うのだが、その意味で政治家の一発言をわざわざとりあげるのは相応しくないと思う。
連合軍占領後の売春街の経緯について。「8 占領軍は慰安所を要求した?」には次の記述がある。
日本の敗戦後に進駐してきた占領軍(連合軍だが主に米軍)がRAA(特殊慰安施設協会)と呼ばれる慰安施設を利用したことはよく知られています。これを占領軍が日本政府に要求して作らせたということを主張している人びとがいます。こういうウソを持ち出すことによって、慰安所を作ったのは日本軍だけではないと言って、責任逃れをしようとしているのでしょう。本当にそうなのか、検証しましょう。
(中略)
この経過を見ると明らかですが、占領軍(米軍)が慰安所設置を申し入れたのではなく、米軍と接触する前に、すでに日本政府(内務省)は、占領軍向けの慰安所設置に動き出していたのです。
ここでは「ウソを持ち出」し「責任逃れをしようと」する批判相手ともども、慰安所の有無が議論の焦点になっている。ウソを暴くことはもちろん重要だが、慰安所の設置そのものでなく、廃業の自由があったのかといった強制性や非人道性を問題にするべきだ。例えば宮台真司は、むしろ占領軍が慰安施設を作らなかったことを批判している*1。
また、「7 公娼制は犯罪を減らすのか?」には次のように書かれている。
7 公娼制は犯罪を減らすのか?
また宮台の意見を紹介すると、彼はアメリカの売買春に対する考え方は特殊であるとしている*2。事実、ヨーロッパでは多くの国で売買春が認められているが、アメリカでは例外的な一部地域を除いて売買春を認めていない。なぜ敢えてアメリカの文献を紹介したのか?
緑:合法であり公認売春宿が存在する
青:合法だが公認売春宿は存在しない
赤:非合法
橋下叩きに利用しようという意図、また、アメリカ的な性道徳主義を広めようという意図を疑ってしまう。個人的には橋下はあまり好きではないが、歴史を未来へ伝えるという大目的に比べると、橋下はあまりにどうでもいい話題に思える。アメリカ的性道徳主義者のみに依拠するのは、どう考えてもフェアじゃない。何より、日本の何が非難されているのかについて、歪んだ認識を生みだすのではないか。
文句があるなら自分で作ればいい、と言われればそれまでかもしれないが、良いサイトだけに勿体ない。