回心誌

日々是回心

まあ一歩一歩やるしか無いんですわなあ。

「『反ヘイトスピーチコーナー』作りませんか」という提案に対する書店員の方の反応 - Togetterまとめ

これ。
ビジネス倫理学の本にあった面白いたとえ話を思い出した。

製紙会社のオーナーが,環境保護の大義に目覚め,自分の会社による川の汚染を止めるのに数百万ドルを費やし,汚染を続けた他者との競争力を失って倒産し,五百人の失職者を出した挙げ句,川は汚染されたままだった.

田中朋弘,柘植尚則(編)『ビジネス倫理学 哲学的アプローチ』

倫理的に振る舞おうとしても、経営上の失敗によって(少くとも帰結主義の立場をとるなら)倫理的にも失敗してしまう、という話。高潔な道徳心を持っていたとしても、経営者や業界団体が自ら倫理的に振る舞うことは難しいのである。したがって、多くの場合、市民や消費者が率先して動くしかないのだと思う。漁獲規制について勝川先生が指摘しているように(勝川俊雄公式サイト - ウナギの乱食にブレーキをかけられるのは誰か?)。

市民には経営者に倫理を求める権利がもちろんあるが、それを拒む権利も経営者にある。「こういう本を置いてくれれば良いのに。売れるよー」という素朴な提案も、「だったら売れるような本を書け。つーか売れないから!」という書店員の率直な反応も、一定の意義があると思う。

作家でも書店経営者でもない多くの我々にとっては、「どっちが正しい!? ファイ!!」みたいなのは実践的には意味が無い。書店だけでなく新聞もテレビもそうだが、メディアは社会の鏡だ。だからこの問題に特効薬は無い。ありきたりな言い方だけど、自分にできることをやるしかない。魅力的な人間になりつつ勉強して、周りの人を説得し連帯する。そうやって地道にいくのが現実的で最良のやり方に思える。


ビジネス倫理学―哲学的アプローチ (叢書 倫理学のフロンティア)

ビジネス倫理学―哲学的アプローチ (叢書 倫理学のフロンティア)