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回心誌

世の中わがんね

映画『映画「立候補」』

映画 政治参加 保守

そもそも,私はもう外山恒一政見放送を笑えない.いや,笑えるけど,ときに笑えないのだ.自明性に埋没した多数派とのズレを感じるほどに生きにくさを感じるからだ.

さて,マック赤坂をメインに撮った映画であるが,このオジサン(もうお爺さんといってもいいかもしれない)は,ただの面白いオジサンではなかった.本当に何を考えているのか分からない不気味さがあって,傍に立てないのだ.そして,あれ?おいおい……と思ってしまうほど危なっかしい.

それで,ほとんど最後まで呆れながら見ていた.はぁ〜期待したほどではなかったな,と.そのはずだったんだが,最後の最後でやられた.
誰もがそれぞれの人生を背負っており,そこに優劣はない.それがこの映画のテーマであり,一人一票の意味だと思った.

以下ネタバレを含む.




まず,外山が案外理知的にしゃべる.これは知らない人からしたらちょっと驚きかもしれない.私はブログなどに目を通したこともあるので,まあこんな感じだろうと思っていた.

羽柴誠三秀吉についてはよく知らなかったが,ちっとも賢そうには見えない.知名度を広げるための戦略としてやっていることを説明し,それは成功しつつあるというようなことを言っていたが,あまりにも楽観的だ.
マック赤坂からも同じような印象を受ける.息子の戸並健太郎すら,父親の立候補について道楽ではないか?という疑念はぬぐえないようだ.

もっと言うと,マック赤坂は道楽どころではない.普通はまずやらないだろう私有地である駅構内で演説を行い,果ては車道に出て交差点のど真ん中でダンス,さらには対立候補に当てつけるような演説・見物.
警察に不信がられても,「帰れ」の大合唱を浴びても…….

マック以外の泡沫候補にもカメラが向けられているが,中村勝という一人娘を育てているお父さんが印象的だ.

ところどころで公職選挙法第○条と出て,個人的にはこういう法律を利用した戦い方はスマートで大好きなんだが,でも交差点のど真ん中で演説するのは道路交通法に抵触しないのか? 京大前での選挙運動も非常にきわどい*1マック赤坂京都府警に,なぜ大阪府知事の候補者を知らないのか,と迫っていたが,京都府なら知らなくても仕方ないのではないか,とちょっと思ってしまったり(冷静に考えると必ずしもそうとも言い切れないところはある),そういうところで一々冷める.カットせずに入れているという意味では好感が持てるが.

しかし,橋下徹に演説をゆずったマックがパックの飲み物を取りだして飲むシーンには奇妙な感動を覚えた.それ以前にもパックの飲み物を飲んでいたのだが,それが何かは見えなかったのだ.しかし,その終盤のシーンで初めてそれが「鬼ころし」であることが分かる.
そうか,マックも素面ではできないのか.自分を酔わせて奮い立たせて,そうまでしないとできないことをしていたのか.そこにマックの覚悟を見た気がしたのだ.

見ている最中からも思っていたが,なんだか荒削りな映画だ.変なところでズームするし,カメラに慣れていないのだろうか.秘書の櫻井は観客とマック赤坂の間に立って翻訳するような人物になるはずなのに,観ていた私が期待したほどそう機能していない.対立候補にインタビューに行き,「人生ってなんですか」なんてしょぼい質問にも呆れた.

そして,マックは最下位の得票率で落選した.その後の候補者の様子をそれぞれ映すところからが俄然面白くなる.
2012年12月衆院選.また,マックは選挙戦を戦っていた.そして,息子の姿があった.父親の政治活動には距離を置いていたようにみえたが,どういう心変わりだろう? そして,日の丸をかかげ罵声を浴びせる自民党支持者にたった一人立ち向かい,声をあげる姿に,不覚にも感動してしまった.この映画は忘れられない映画の一つになりそうだが,それは息子の戸並健太郎のおかげだ.

新潟で最初に上映されたのは10月で,その時点ではこの最後のシーンは無かったわけで,そのバージョンでは多分私はここまで感動はしなかったと思う.しかし逆に,最後のシーンのせいで,「なぜ立候補するのか」という本来のテーマがぼやけてしまったかもしれない.
正直に言って,結局最後までマックがなぜ立候補するのかは分からなかった.

結局,この映画に感情移入できるかどうかは自民党や日の丸や多数派に対してどういうスタンスを取っているのかのみによるのではないか.だからむしろ自民党支持者,保守派,日の丸をかかげる集団に誇りを感じる人たちがどう感じるのかをぜひ知りたい.

なぜマックがあそこまでするのか?ということについて,このブログではかなり踏み込んでいた.

「日本の政治舐めんなよ」と突っかかってくる人たちがいた.それも分かる.でも,マックや外山のやり方も分かる.どうせ既存のやり方じゃ勝てないのだ.でも本気で勝ちたいなら,既存のやり方にのっかるしかない.そのジレンマは『選挙』『選挙2』にも表れていると思う.新しいやり方で勝てたらカッコいい.でもそれじゃなかなか勝てない.何かを変えなきゃいけないと思っている人は少なくない.まずは人びとにこびりついている自明性を引きはがすところから始めるしかない.

*1:公職選挙法第140条の二第2項によると,学校の前で「連呼行為」を行うことは禁止されている