回心誌

日々是回心

靖国神社って変なところだと思うんだよなあ

 靖国神社の「下乗」の立て札のそばでは、毎年敗戦の日の正午近くに、旧軍服を着た右翼7、8人がいわゆる「記念儀式」を行い、軍用ラッパを吹き、軍刀を閃かし、整列して万歳三唱して、メディアや個人の格好の撮影対象となる。だが驚いたことに記者がその中の一人、「三浦」さんに日本兵を演じる理由を聞くと、靖国神社に祀られている親戚や友人もいなければ、いかなる政治団体にも属さず、戦争経験すらないというのだ。実際には彼は戦争ファンタジーに夢中の普通の定年退職者に過ぎず、外交や国益についての理解も「模擬軍事装備」購入の情熱に遠く及ばないのである。足を高くあげ意気揚々たる写真の数々は、意外にも素人芝居に過ぎなかったのだ!だがこのように薄っぺらい動機でも、周囲の「参拝者」たちからは拍手と歓呼が上がるのである。

 ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』には軍服姿のおじさんがたくさん登場していたなあ。

 動画にこういうコメントがあった。

靖国神社を正しく理解していない外国人によって作られた映画を、­なぜ掲載するのですか??
この動画は本当の靖国神社を説明していない!!

 確かに映画制作者の靖国神社に対する理解は、それについてきちんと勉強した人たちと比べるとはるかに浅いだろうとは思うし、詳細な説明も無い。でも靖国神社がどういう人たちにとって魅力的なのか分かって面白かった。
 靖国神社の資料館である遊就館では、政治家が発言しようものなら一発で退場させられかねない戦争美化言説を垂れ流しているようだったし、国内外の遺族の意向を無視して祀っていることも分かった。思想・信条・表現の自由から、法的には問題ないと思うが。
 といった辺りで部分的かつ偏向的であるにせよ、面白い映画だった。

 日本人なら靖国神社に参拝するのが当然!というような主張があるが、戦没者に対する慰霊の念と靖国神社に参拝するかどうかとはまた別の話だと思う。靖国神社は今や公的機関ではなく*1、あくまで私的な(民間の)宗教法人に過ぎず、しかも日本は侵略国ではなかったというような主張を少なくとも受け入れており、これが日本国民の一般的な見解とは言えない。

◆日本を侵略国と断罪した東京裁判の不当性を暴き刑場の露と消えた「戦犯」の無念をふりかえる

とある。このように侵略を行ったことについて否定するようなビデオを流しているが、この立場は一般的ではないだろう。個人的には東京裁判擬制であったとは思うが、不当であったとは思わない。

 政府は日本が侵略したことを前提として他国と関係を築いている。安倍晋三国際法上確立された侵略戦争の定義はないとしてはぐらかしたことがあるが*2ヒューマンライツ・ナウがこれについて結構詳しく議論した声明を出している。

 余談だけど、なんか面白い論評。

*1:そうでなければと政教分離原則に反する

*2:歴史認識と戦争責任に関する質問主意書と政府答弁書 :日本経済新聞 その後「侵略しなかったと言ったことはない」としたhttp://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/654580/