倫理学関連で読んだ本の感想まとめ。
西垣 通『情報倫理の思想』
相当難しくて、背伸びしながら読んだけど、やっぱり難しかったな〜。
ルチアーノ・フロリディの情報哲学を中心に議論してた。
情報を倫理的行為の対象として捉え直し、エントロピーの増大が悪で、それを避ける行為が善、という話だったと思う。
例えば動物倫理って、倫理的行為の対象を人間だけでなく動物にも拡張しましょうという思想なんだけど、情報にまで拡張してみたら・・・という話。んで、エントロピーを使って定義するところが面白い。キュウベェみたいだね。
わいは読んだことないけど、フロリディの思想については↓の本のほうがいいかも。
- 作者:ルチアーノ・フロリディ
- 発売日: 2017/04/10
- メディア: 単行本
内井 惣七『進化論と倫理』
- 作者:内井 惣七
- メディア: 単行本
タイトルから察するに、進化論をベースに倫理を再構築する・・・というような話な気がする。
ほとんど覚えてない。当時の読書メモ読んでもほとんど分からない。「なぜ人は倫理的なのか(もしくは倫理的であることを求めるのか)」という議論をしてて、何が倫理的なのか(善いことなのか)はあまり議論してなかったような感じがする。うーん。
伊勢田 哲治『マンガで学ぶ動物倫理』
マンガだけど、中身はちゃんとしてる。
例えば、人間だけを倫理的行為の対象にするのはなんで?という動物倫理の基礎となる問いについて、丁寧に複数の立場の議論を紹介している。
倫理学ってなんの役に立つの?という疑問への答えになっているとも言えるかも。倫理学の入口としておすすめ。
マンガじゃなくてもいいんだけど、という人は↓のほうがいいかも。(自分は未読)
- 作者:伊勢田 哲治
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: 単行本
基本的に伊勢田先生は信頼できます。
田中朋弘,柘植尚則(編)『ビジネス倫理学––哲学的アプローチ』
ビジネス倫理学―哲学的アプローチ (叢書 倫理学のフロンティア)
- メディア: 単行本
お人好しの経営者が、環境に配慮した結果経営不振になり会社が潰れてしまう話が出てきて、それがすごい好きでよく覚えている。
他はメモみたけどあんまよくわかんねえわ。
経営者にとっての倫理ってすごく難しいよなあ、と思う。環境やCSRやら配慮しなきゃいけないけど、利益が出なきゃ潰れて社員が路頭に迷う。
個人的には、経営者に人格や徳を求めてもしょうがないという気持ちがある。そうでなくて、正しく行動する経営者が損をしないように法律で縛るべきで、そのためには不断の監視と政治参加が不可欠。それは経営者が頑張る話ではなくて、市民が頑張るべきこと。
久木田水生、神崎宣次、佐々木拓『ロボットからの倫理学入門』
分かりやすくて、読み物として面白かった記憶がある。プライバシーについての議論もあって、コロナvsプライバシーみたいになってる今読むとまた面白いかも。
奥野 満理子『シジウィックと現代功利主義』
- 作者:奥野 満里子
- 発売日: 1999/05/01
- メディア: 単行本
いやー我ながらよくこんな本読んだねえ。
古典的な功利主義者といえば、ベンサム、ミル、シジウィックみたいなとこある(らしい)。
この本はシジウィックの議論と、そこから派生したヘア(という割と最近の哲学者)の功利主義を紹介する。
功利主義、教義的直観主義(=義務論)、利己主義の3つの立場を検討し、頑張って「功利主義はいいぞ」と言おうとするんだけど、利己主義も実は否定しがたい、みたいになってて面白かった思い出がある。
そもそも利己主義を倫理の方法として検討する時点でなかなか面白いんだけど。
他の本が、倫理を政策や意思決定に生かす実践的な倫理(応用倫理)ばかりなんだけど、この本は足下からじっくり議論を積み上げていく。すごく哲学って感じ。