回心誌

世の中わがんね

精神疾患の受け皿としての役割を家族に押し付けすぎな件

blog.lalamiamor.net


精神疾患の当事者の視点から「受け皿」について書かれた上の記事を読んで、思うところあって調べていたら、日本と欧州の非自発的入院(医療保護入院)について比較した研究があったので、紹介します。


【PDF】家族等の同意に基づく医療保護入院に関する批判的検討 ――政策形成過程と国際比較の観点から――
https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/FO/0014/FO00140L097.pdf



私も全部読んだわけではないのですが、簡単に欧州が日本と異なっている点をまとめると、次の3点になります。

  • 非自発的入院者の割合が極めて低く、期間も限定的
  • 居住施設の確保や緊急時の訪問支援体制等の入院によらない地域生活支援体制が整備され、可能な限り入院治療を回避するシステムを採っている
  • 家族は非自発的入院の決定に関与していないこと、非自発的入院の費用は公費で賄われ,費用負担は無く,家族に依存しない制度設計となっている


日本は上の3点と真逆の状況にあるということですね。


家族の負担が重いのは、本人との間のあつれきにつながっていそうです。


自分の存在が家族の負担になっていることを感じたり、敵対するような関係になってしまうのは、家族にとっても本人にとっても辛いだろうと思います。

(あくまで素人の意見ですが、こういう状況が反社会的な行動につながっていたりしないんだろうか、と思ってしまいます)


また、家族が入院を決める点もトラブルにつながりそうですね。家族の決定を本人が恨んだり、恨まれることを恐れて家族が入院を決められなかったり、ということがどなたかのブログ記事で指摘されていたように思います。


(医師のような専門家が決めるということになったとしても、それはそれで専門家の責任が重くなるので、決める側としては避けたいことなのかもしれませんが)


非自発的入院者の割合と期間についてですが、それに関連して精神病床の日数についてグラフがあったので、載せておきます。

下の図は、厚生労働省の資料から抜粋したもので、減少傾向ではあるものの、日本が飛び抜けて高い位置にあることがわかります*1

f:id:interferobserver:20180613223147p:plain



この傾向は精神疾患患者の家族の負担が重すぎることの裏返しなのではないでしょうか。

つまり、あまりにも重すぎる負担から解放されたいがために、より長期の入院を家族が望むのだろうと考えられないでしょうか。



根本的な解決には「地域生活支援体制」の構築が必要なのだろうということが言えそうです。

具体的にどうすればいいのか、というのはまだよくわかりませんが……。


ひとまず言えるのは、残念ながら日本は精神疾患の家族に厳しいこと、もっと広い受け皿を作れている国があるということ。

きれいごとと言われてしまうかもしれませんが、私は、もっと良くなることができるんだと思うと少し希望を感じます。


日本が欧州諸国のように地域での包括的な支援体制が作れるかはわかりませんが、学ぶ価値はありそうです。勉強していけたらと思います。




以上です。お読みいただきありがとうございました。


精神医療に葬られた人びと?潜入ルポ 社会的入院? (光文社新書)

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この本は売ってしまって手元にないのですが、家族への負担が重いことも含め、歴史を踏まえながら、日本の精神医療がいかに特殊であるかを批判しています。


恥の烙印―精神的疾病へのスティグマと変化への道標

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紹介した研究では制度的な観点からの考察が主題ですが、文化的にも家族への負担というものは厳しいものがあるのだろうと思います。その補助線として、この本が役立ちそうに思います。ほんの一部日本の状況(回復に対する強い悲観主義、個人に帰責する傾向)についても触れています。